
「顔で選ぶと離婚率が高い」は本当か? 公開データと研究で確かめる|婚活の定説とデータ①
2026年9月29日
最近、X(旧Twitter)でも再び話題になった「顔で選んだ人がいちばん離婚しやすい」という説。婚活の現場やSNSで以前から繰り返し語られてきた定説の一つです。相手を顔で選ぶことに後ろめたさを感じている人にとっては、気になる話ではないでしょうか。この記事では、この説を公的統計と学術研究という公開されている範囲で確かめ、なぜその数字が公的統計からは作れないのかまで掘り下げます(非公開のデータや個人の経験則を否定するものではありません)。
※本記事は2026年9月時点の公開データをもとにした解説です。最新の動向はコラム一覧をご覧ください。
この記事のポイント
- 結論:「顔で選ぶと離婚率が高い」を裏づける公的統計や公開された研究は見当たりません(相談所ごとの体系的な追跡データも公開されていません)
- データがない理由:人口動態統計(離婚届)にも家庭裁判所の調停の動機区分にも「相手を選んだ理由」の項目がなく、公的統計からは算出できません
- 研究が示すこと:米国の研究が示すのは「魅力的と評価された本人」が離婚しやすい傾向で、「顔で相手を選んだ側」の話ではありません
- 未婚者の実態:出生動向基本調査では、結婚の意思がある未婚者の約8割が容姿を重視・考慮しており、顔を気にすること自体は多数派です。同時に、顔で選べば安心だと言えるデータもありません
なぜ「顔で選ぶと離婚率が高い」と言われるのか。裏づけに必要な公的データは存在しない
結論から述べると、この説は相談の現場で語られてきた経験則がSNSで繰り返され、定説のように扱われるようになったものです。裏づけようとすると、必要なデータがそもそも作られていないことが分かります。
この説を確かめるには、「結婚したときに相手を何で選んだか」と「その後に離婚したか」を、同じ人について追い続ける調査が要ります。日本で離婚の全件を扱う人口動態統計は、離婚届の内容をもとにしています。離婚票の項目は夫妻の生年や国籍、離婚の種別、同居を始めた時期、別居の時期、職業など14項目で、すべて客観的な事実です。相手を選んだ理由も、離婚の理由も、項目自体がありません。家庭裁判所の調停で集計される「申立ての動機」も、「性格が合わない」「異性関係」「生活費を渡さない」といった区分で、結婚したときの選択基準は含まれません。
上の図のとおり、「相手を何で選んだか」はどの公的な記録にも項目がありません。つまり「顔で選んだ人の離婚率」という数字は、公的統計からは作れないのです。数字が語られるとすれば、それは誰かの記憶や、限られた範囲の集計に基づくものだと考えられます。
公的統計と学術研究から分かること:顔を気にするのは多数派で、研究が示すのは「別の問い」
分かるのは、容姿を気にして相手を選ぶ人がとても多いことと、魅力的な本人ほど離婚しやすいという別の話の2つです。
国立社会保障・人口問題研究所の「出生動向基本調査」(第16回・2021年)では、いずれ結婚するつもりの未婚者に、結婚相手の条件として重視・考慮するものを尋ねています。相手の容姿を「重視する」または「考慮する」と答えた人は男性81.2%、女性81.3%でした。もっとも多いのは人柄で、男性95.1%、女性98.0%です。女性が容姿を重視・考慮する割合は、1992年の67.6%から上がっています。顔を見て選ぶのは、特別な人の行動ではなく多数派の行動だと言えます。
上の図のとおり、容姿を重視・考慮する人は男女とも約8割で、人柄に次ぐ水準です。
学術研究はどうでしょうか。米国の研究(Ma-Kellams, Wang, & Cardiel, 2017)は4つの調査を通じて、高校の卒業アルバムで魅力的と評価された男性や、魅力的と評価された著名人ほど、結婚期間が短く離婚しやすい傾向を報告しています。ただしこれは「魅力的な本人」の話であり、「顔で相手を選んだ側」の話ではありません。別の米国の研究(Meltzer et al., 2014)は、妻が魅力的だと夫の結婚満足度が結婚後4年間にわたって高い傾向を示しましたが、離婚は扱っていません。日本の研究(鈴木ほか, 2018)は結婚相談サービスの会員を分析し、容姿が成婚や相手の選び方にどう影響するかを示していますが、対象は成婚までで、離婚は含まれません。
上の図のとおり、研究が扱ってきたのは「魅力的な本人」の側で、「顔で選んだ側」の離婚を追った公開研究は見当たりません。
結婚相談所が公表する「成婚者の離婚率◯%」という数字も、追跡する期間、分母に誰を含めるか、自己申告に頼るかどうかが各社で異なると、業界の中からも指摘されています。異なる条件で出た数字を並べても、比較にはなりません。成婚率にも同じ構造があり、定義や計算式の違いを知っておくと数字の読み方が変わります。
日本語と英語の範囲で探した限り、「顔で選んだ人がいちばん離婚しやすい」を直接示す公開調査は見当たりませんでした。
元店長の視点:外見は「入口」に強く効いていた
押上で婚活バーを運営していた立場から言えるのは、外見は関係の入口に強く効いていた、ということです。その先まで追えた例はほとんどないため、続くかどうかについて現場から語れることは限られます。
カウンターでよく聞いた言葉があります。「いい人だけど、顔が好きじゃない」「スキンシップがどうしても想像できない」。外見は、相手を深く知る前の段階で、始めるかどうかを左右する条件として働いていました。
一方で、「顔は好みではなかったけれど、アプローチされて付き合った」という人も珍しくありません。私生活では、顔で選んで結婚した人の話もよく耳にします。現場から見える範囲では、外見は入口を左右しますが、その後がどうなるかを決める材料としては見えていませんでした。入口の先を知るには、実際に会って過ごす時間が要ります。対面で人柄を確かめられる婚活イベントが各地にあるのは、そのためでもあります。
まとめ:顔で選ぶのは責められることではなく、正解でもない
「顔で選ぶと離婚率が高い」という説を裏づける公開データは見当たりませんでした。同時に、「顔で選べば安心」と言えるデータもありません。分かっているのは、多くの人が容姿を気にして選んでいることと、入口を通ったあとの関係を支えるのが、生活習慣や金銭感覚、困ったときの対話のように会ってから分かる要素だということです。
外見に惹かれることも、人柄を知って惹かれることも、どちらも自然な心の動きです。不確かな説に惑わされて自分の感覚を疑う必要はありません。選ぶ基準に唯一の正解はなく、自分がその選択に納得できているかどうかが大切だと考えます。自分に合う出会い方を考える材料には、出会い方タイプ診断もご利用ください。
この記事で確かめたのは、公的統計や査読論文など公開されている範囲です。結婚相談所などが内部で持つ非公開のデータや、個人の経験則を否定するものではありません。
よくある質問
結婚相手を顔で選ぶと後悔しますか?
公開されているデータの範囲では、顔で選んだ人が後悔しやすい、離婚しやすいと示すものは見当たりません。米国の研究には、魅力的な本人ほど離婚しやすい傾向を示すものがありますが、顔で選んだ側の話ではありません。後悔するかどうかは、選んだ後にどれだけ相手を知り、対話を重ねられるかに左右されると考えられます。
結婚相談所が公表する「成婚者の離婚率」はどう読めばよいですか?
各社が独自に集計した参考値で、追跡する期間や分母の決め方、自己申告に頼るかどうかが会社ごとに異なるため、他社や一般の離婚率とそのまま比べることはできません。公的統計には「相談所で結婚した人の離婚率」という集計は存在しません。
容姿を重視するのは高望みですか?
出生動向基本調査(2021年)では、結婚の意思がある未婚者の約8割が相手の容姿を重視または考慮すると答えています。容姿を気にすること自体は多数派の行動であり、高望みとは言えません。人柄を重視・考慮する人が9割を超えていることも、あわせて知っておくとよいでしょう。
この記事は、公開されている公的統計と学術研究をもとに書いています。根拠を伴うご指摘・反論・新しいデータがあれば contact@mote-jp.com までお知らせください。内容に応じて訂正・修正・追記(更新)を行い、その旨を記事末尾に記録します。
参考文献
- 国立社会保障・人口問題研究所(2022)『第16回出生動向基本調査(結婚と出産に関する全国調査)報告書』図表3-2-1「調査別にみた、結婚相手の条件として重視・考慮する割合」(調査は2021年6月実施)
- 厚生労働省「人口動態調査 離婚票(平成31年〜)」調査項目一覧(政府統計の総合窓口 e-Stat)
- 最高裁判所『司法統計年報 家事編』「婚姻関係事件数―申立ての動機別申立人別」
- Ma-Kellams, C., Wang, M. C., & Cardiel, H. (2017). Attractiveness and relationship longevity: Beauty is not what it is cracked up to be. Personal Relationships, 24(1), 146–161.[本人の魅力度と結婚の継続期間・離婚の関係を調べた米国の研究]
- Meltzer, A. L., McNulty, J. K., Jackson, G. L., & Karney, B. R. (2014). Sex differences in the implications of partner physical attractiveness for the trajectory of marital satisfaction. Journal of Personality and Social Psychology, 106(3), 418–428.[配偶者の魅力度と結婚満足度の推移を4年間追った米国の研究]
- 鈴木翔・須藤康介・寺田悠希・小黒恵(2018)「学歴・収入・容姿が成婚と配偶者選択行動に与える影響」『理論と方法』33(2), 167–181.
著者:押上婚活バーの元店長
2023年12月〜2025年、東京・押上で婚活BARを週末運営。毎回30〜40人規模(多い日は50人)のイベントを1人で企画・運営。婚活疲れの実態を間近で見てきた経験から、m.o.T.eを開発中。
現在、会う前から、その人らしさや魅力が伝わる婚活プラットフォーム「m.o.T.e」を準備中です。独身証明や行動の積み重ねが可視化されることで、写真の第一印象だけにとどまらない出会いを目指しています。